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新潟地方裁判所 昭和45年(ワ)478号 判決

主文

一、訴外有限会社千代田商店が別紙「譲渡債権一覧表」中「譲渡債権」欄記載の各債権を昭和四五年四月二二日被告に譲渡した行為はこれを取消す。

二、被告は、

原告株式会社浜金商店に対し金八万五、二一四円、

原告株式会社山忠に対し金一三万八、九八二円、

原告新潟和田化学工業株式会社に対し金二二万一、六八九円、

原告大東セロフアン株式会社に対し金八万三、二七五円及び右各金員に対する昭和四五年九月二九日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三、訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告ら訴訟代理人は、主文一、二、三項同旨の判決を求め、その請求の原因として、

一、原告株式会社浜金商店(以下原告浜金商店と略称)は食品包装軽量容器、結束紐、包装附属品などの製造、販売を、原告株式会社山忠(以下原告山忠と略称)は食品包装紙などの製造、販売を、原告新潟和田化学工業株式会社(以下原告新潟和田化学工業と略称)は、合成樹脂原料による加工、製造並びにその製品の販売などを、原告大東セロフアン株式会社(以下原告大東セロフアンと略称)は、セロフアン紙及び紙製品の加工並びに販売などを、それぞれ業としているものである。

二、原告らは、いずれも訴外有限会社千代田商店(以下千代田商店と略称)に対し食品包装容器、同包装用紙、ポリエチレン袋、セロフアン袋などを継続して販売し、昭和四五年四月二二日現在千代田商店に対し、原告浜金商店は金八六万九、四〇〇円、原告山忠は金一四一万七、九八七円、原告新潟和田化学工業は金四一〇万二、六〇四円、原告大東セロフアンは金一二四万九、六三〇円の各売掛代金債権を有していた。その後右債権に対する弁済として、訴外佐藤貞夫から原告新潟和田化学工業は金一八四万〇、七八〇円、原告大東セロフアンは金四〇万円の各支払を受けたので、現在千代田商店に対し原告新潟和田化学工業が有する債権額は金二二六万一、八二四円、原告大東セロフアンが有する債権は金八四万九、六三〇円である。

三、千代田商店は、昭和四五年四月二二日頃その取引先である別紙「譲渡債権一覧表(以下別表と略称)」中「債務者」欄記載の各債務者に対し別表中「譲渡債権」欄記載の各債権合計金一〇七万五、〇一二円を有していたところ、当時原告らほか多数の債権者に対し合計約一、〇〇〇万円の債務を負担していたのに対し、その資産としては前記各債権のほか若干の在庫品を所有していたにすぎないにもかかわらず前同日原告ら債権者を害することを知りながら、前記「譲渡債権」欄記載の各債権を被告に対し無償で譲渡した。仮に、右債権譲渡が千代田商店の被告に対する債務の代物弁済としてなされ、あるいは譲渡された債権を取立てて債務の弁済に充当する約定のもとになされたものとしても、右行為は原告ら債権者を害する意思のもとになされたものであるから、詐害行為となるものといわなければならない。

四、しかして、被告は同年四月二二日頃から同年七月頃までの間、別表「債務者」欄記載の各債務者から同表中「弁済受領金額」欄記載の各金額(合計金五二万九、一六〇円)の弁済を受けてこれを消滅させた。

五、よつて、原告らは、千代田商店と被告との間の前記債権譲渡行為の取消を求め、かつ、被告に対し原状回復に代る損害賠償として、被告が前記債権譲渡によつて得た利益金五二万九、一六〇円につき原告らの各債権額に応じて按分した主文第二項記載の各金員及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴に及んだ、

と述べた。

被告訴訟代理人は、請求棄却の判決を求め、答弁として、原告ら主張の請求原因事実中、第一、二項記載の事実及び第三項記載の事実のうち原告ら主張の日時に原告主張のように債権譲渡がなされたこと並びに第四項記載の事実はいずれもこれを認める。第三項記載の事実中前記債権譲渡が無償でなされたこと、千代田商店の資産状況及び右債権譲渡が原告ら債権者を害することを知りながらなされたことはいずれも否認する。被告は千代田商店に対し昭和四五年四月当時金一〇五万二、〇九八円の売掛代金債権を有していたところ、千代田商店は右債務の弁済のために前記債権譲渡をしたものであつて、債務の本旨に従つてなされた弁済は常に詐害行為とならないのであるから原告らの本訴請求は失当である、と述べた。

証拠(省略)

(別紙)

譲渡債権一覧表

〈省略〉

〈省略〉

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